顔のシミを取る方法
フラルグループ理事長
皮膚科専門医 髙田美子が
監修しています
目次
Toggleシミができる仕組み
シミとは、皮膚の特に表皮の部分でメラニンが異常に増えている状態です。
メラニンは、表皮の一番下、基底層にある「メラノサイト」という特別な細胞で作られます。
通常は、メラノサイトは肌色を作ります。ところが、原因①~③が加わることで、メラノサイトがアクティブ状態になってしまい、肌色を作る量を超えて、どんどんメラニンを作り出します。
これが、日焼けの時に肌が褐色に変わる仕組みです。
そして、このメラノサイトのアクティブ状態、日焼けの時など本来は原因①~③が取り除かれると元に戻るはずなのですが、いつまでもアクティブ状態が続いている…これがシミとして残りつづける一つ目の理由です。
2個目の理由は、メラノサイトのアクティブ状態はおさまってきたけれど、作られすぎたメラニンがいつまでも表皮の中にとどまっていて、なかなか肌から抜け出せていないということです。
シミ治療の際も、この理由1、2を考えながら計画を立てることが大切です。
例えば、レーザーをシミに当てても、その効果はいま皮膚の中にあるメラニンを壊すことにしか働きません。
せっかくシミを治療したのであれば、アクティブ状態のメラノサイトの改善もしていかなければ再発のリスクがあります。
これゆえレーザー治療と一緒に、飲み薬や美白剤などを使っていくトータルケアが一番効果的です。
消したいシミの種類と治療
シミの種類ごとに治療法も異なりますので、ひとつひとつ解説していきます。
日光色素斑(老人性色素斑)
特徴
まず、シミといって頭に思い浮かべた症状…それが日光色素斑(老人性色素斑)です。
このタイプのシミは、紫外線(日光)が大きく影響していて、できる場所は、紫外線のよく当たる顔、その中でも特に頬の高いとこからフェイスラインに向けて、ほかには手の甲にもよく見られます。
若いころに海で日焼けを繰り返していると、肩から肩甲骨にかけて、この日光色素斑がみられることもあります。
ほとんどの日光色素斑は、丸い形をしていて、色は薄い茶色~濃褐色です。おおむねベタッとした均一な色のシミとして見られますが、中央が濃くて、端に行くほど少し淡い色に変化することもあります。
どちらにしても周囲の肌とは境界がはっきりしています。 米粒ほどの大きさのものから数cmの大型のものまでさまざまです。
治療
日光色素斑は、紫外線の影響をうけてメラノサイトがアクティブな状態になっています。
それゆえ、治療と一緒に、日焼けを避け紫外線対策をすることも必要となります。
一度できてしまった日光色素斑は、一般的に販売している化粧品でのセルフケアで消すことは難しく、クリニックでの治療がおすすめです。
治療は、
①レーザー治療+美白剤外用
②トレチノイン+美白剤の外用療法
があります。
合わせて、メラノサイトのアクティブな状態を抑えるために内服(トラネキサム酸)も必要です。
レーザーは、
Qスイッチ付きルビーレーザー
Qスイッチ付きアレキサンドライトレーザーQスイッチ付きYAGレーザー
ピコYAGレーザー
ピコアレキサンドライトレーザー
などを用います。
そばかす:雀卵斑(じゃくらんはん)
特徴
「そばかす」は医学的には「雀卵斑(じゃくらんはん)」と呼ばれます。
両頬を中心に茶色い小さな粒のような斑点がいくつも散らばっていて、鼻背にも同じ色素斑があることを特徴とします。
しかも、この一つ一つの斑点は、それぞれが独立していて境界が明瞭です。 この鼻背に色素斑があること・斑点が独立していることから、後述の肝斑やADMと見分けることができます。
小学生のころには顔のそばかすがはっきりわかるので、遺伝的にできるシミと言えます。
紫外線によく反応し、春~夏に色調が濃くなり目立つことが多く、冬は薄くなる傾向にあります。
紫外線を浴びたからそばかすが増えたり、色素斑が大きくなるということはなく、色調が濃くなるといった変化がみられる程度、逆に、紫外線を浴びなかったからといって、そばかすがなくなったりはしません。
治療
ほかのシミのような、メラノサイトがアクティブな状態になっているというものではなくて、遺伝的に頬のメラノサイトが過剰に色を作り出し続けている状況なので、完全に消し去る(つまり二度と出ないようにする)ことは現時点では難しいです。
しかし、クリニックの治療にはとても反応が良く、一過性に肌にある斑点を消すことは可能です。
斑点が薄れている期間は、個人差と治療後にあびる紫外線量によって変わりますが、数か月程度は斑点がない状態を維持できます。そばかすも、一般的に販売している化粧品でのセルフケアには反応が悪いので、クリニックでの治療がおすすめです。
クリニックでは光治療を第一選択とし、取れにくい濃い斑点があればその部分は、日光色素斑と同じレーザー治療でとることが可能です。
いったん今あるそばかすを除去した後、トレチノインと美白剤を併用したスキンケアを取り入れることで長期間キレイな状態を保つことも可能です。
肝斑(かんぱん)
特徴
「肝斑(かんぱん)」は、両頬にボヤ~っと広がるシミで、うす茶色~濃い茶色のシミで、左右対称に発生します。
両頬だけではなく、口の周り、額にもできる場合もあります。
30代~40代の女性に発症しやすく、症状が見られるのはだいたい50代後半まで。妊娠中やピルを服用しているときなどに濃くなりやすく、閉経後は目立たなくなっていくとされています。
60代以降で新たに肝斑が発症することはほとんどみられません。 また、アジア人によく見られ、欧米人には発症しにくいとされています。
肝斑も遺伝的な要素があり、できやすい人と全くできない人に分かれます。 日光色素斑が誰にでもできる可能があるシミだとすると、肝斑は家系内で発生をします。
つまり身内に誰も肝斑の人がいなければ、この先もできない可能性が高いといえます。逆に、身内に肝斑のある人がいれば、しっかり予防策を取ることをおすすめします。
とくに、紫外線は悪化要因なので、ご注意ください。
治療
肝斑は他のシミと異なり、トラネキサム酸の内服が効果的なことが、世界中で多数論文で発表されています。
また、こすれたりなどの摩擦・紫外線が悪化要因としても知られているので、肝斑には刺激を与えないようにご注意ください。
肝斑の治療は、トラネキサム酸の内服と低刺激のレーザートーニング治療、あるいはトラネキサム酸の内服とトレチノイン+ハイドロキノンの外用薬などを行います。
そして、肝斑はほかのシミと違って、注意しないといけない厄介なことがあります。
それは肝斑は刺激の強い治療を行うと、逆効果でシミが濃くなる可能性があります
それゆえ、肝斑と日光色素斑が重なってできている場合は、どのように治療していくか、医師としっかり相談が必要です。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)
特徴
「ADM」は頬骨を中心に現れるアザです。
「後天性真皮メラノサイトーシス」
「両側性太田母斑様色素斑」
とも呼ばれています。
ほかのシミよりも灰色~紫褐色に見える青みがかった色をしていて、一つ一つの色素斑は5㎜程度とやや大きめかつ独立しています。
通常のシミと異なり、メラノサイトが皮膚の深い場所(真皮内)に位置している色素病変です。明らかな原因は不明です。
皮膚の中に色だけが存在しているので、大きさや濃さが変化することはなく、紫外線の影響もありません。
シミの一種である「肝斑」とよく似ていますが、一つ一つのシミが独立していること そばかすと比較すると、ADMのほうが1つ当たりのシミが大きいこと、ADMは鼻背には見られないことなどから見分けることができます。
治療
ADMの治療には、あざの治療が効果的です。塗り薬や美白の化粧品は効果がありません。
レーザーは、
Qスイッチ付きルビーレーザー
Qスイッチ付きアレキサンドライトレザー
Qスイッチ付きYAGレーザー
ピコYAGレーザー
ピコアレキサンドライトレーザー
などを使います。
治療によって完全に消えると再発はありません。
炎症後色素沈着
特徴
「炎症後色素沈着」は、ニキビ、傷、やけど、虫刺されなど、何かしらのダメージによって皮膚に炎症が起こったあとにメラニンの色素が沈着してできたシミを指します。
炎症により、メラノサイトがアクティブになり色を作り続けている状態です。
通常肌の炎症が治まって赤みが引いた後にあらわれ、肌のターンオーバーによって半年から数年かけて徐々に薄くなっていくことが多いのですが、受けたダメージの状況によっては消えずに残る場合もあります。
レーザー治療の刺激で、炎症後色素沈着ができることもあります。
治療
炎症が起きているところに、さらに炎症を起こすレーザー治療はできません。
トレチノイン+美白剤という塗り薬の治療が最適です。
クリニックでは、0.025%~0.4%ほどまでトレチノインの濃度を多種準備して治療を行います。
トラネキサム酸の内服も、炎症後色素沈着には効果的だとの発表もあり、塗り薬と併用して3~6ヶ月ほど内服することをおすすめします。