唇のシミ、黒ずみを
取る方法
フラルグループ理事長
皮膚科専門医 髙田美子が
監修しています
目次
Toggle唇がほかの皮膚と違う点
原因を深堀する前に、まずは唇の皮膚の特殊性を理解すると、参考になります。
皆様もお気づきのように、唇はほかの皮膚より薄く、赤い色をしています。
つまり、通常の皮膚とは異なる構造を持っているのです。
実際に唇は、他の肌と異なり、肌の自前の保湿作用を行う汗腺、皮脂腺がほとんどありません。
「角質層」とよばれるバリア機能も低い部位です。
通常肌全体はこの「角質層」のおかげで乾燥から守られているわけですが、もともと角質層が薄い唇は、ちょっとした炎症や刺激で、角質層がはがれ、水分が蒸発してガサガサしやすくなっています。
そんな防御力の低い唇が、乾燥してガサガサに(角質が乾燥してめくれている状態)なり、そこに外側からの炎症や刺激が加わると、唇の色素沈着、シミの原因になります。
これらの特徴から、唇は年齢にかかわらず小学生でも色素沈着やシミができることがあります。
唇の炎症や刺激を起こす原因は、様々あります。
原因①唇をなめてしまう
唇が乾燥しているときに、つい舐めてしまうクセがある人は要注意です。
乾燥すると、思わず舐めてしまうことがありますが、
なめる
↓
水分が唇表面につく
↓
水分が蒸発するときにさらに乾燥する
↓
炎症が強くなる
という、負のスパイラルに入ってしまい、その結果、唇のふちに強い炎症後色素沈着が生じてしまいます。
また、唇のふちだけでなく、唇の上の皮膚の部分も同じ理由で、色素沈着する場合もあります。
原因②摩擦によるダメージ
マスクや下着でこすれる=これらの刺激で、肌ではLI-4やIL-13という伝達物質が出ます。これが弱い炎症を引きおこし、その結果MSHが分泌され、色素沈着が生じると考えられています。
部分的な刺激だけではなく、顔全体に刺激が加わることもあります。 合わない化粧品を使っていると長期間にわたって顔全体に刺激を与えていることになります。
古くなった化粧水などは、中身が刺激物質に変化している可能性があるため、注意が必要です。 メイクや洗顔時に、肌をこすってしまうことも要注意。
原因③紫外線によるダメージ
唇は他の皮膚に比べてバリア機能が弱いため、紫外線のダメージをより強く受けます。
さらに、日焼け止め効果のあるリップを塗っても、飲食や唇を動かすことでせっかく塗った日焼け止めも取れやすいです。
唇がガサガサと皮がむけている状態で紫外線に当たると、その部分は紫外線のエネルギーが直接肌の基底層にあるメラノサイトに当たり、シミができる原因となります。
原因④血行不良
唇は本来は、血流の色を反映していますが、唇の毛細血管が細くなってしまったり、酸欠状態になると唇の色が黒ずむ原因となります。
特にタバコを吸っている方は、唇が黒ずみやすいの注意しましょう。
唇は、タバコの悪影響を最初に受ける部位になります。
すなわち、タバコの煙が口に溜まり、通過することで直接的な影響を与えるとともに、血液を介して間接的な影響も及ぼします。
口の中にたまったタバコの煙は、唇の裏側や口腔内で粘膜から直接吸収され、そのまま口周囲の血管にニコチンの作用が働き血流の低下、酸素の低下をもたらします。
さらに、ニコチンがメラノサイトを刺激してメラニン生成を促進することがアメリカの論文でも報告されています。
原因⑤口紅などによるかぶれ
紫外線による刺激と同じくらい頻繁に見られる唇への刺激は、口紅やリップクリームなどの製品によるかぶれです。
この口紅やリップクリームによるかぶれの厄介な点は、使っている本人が「かぶれている」のに気づきにくいことです。
塗った直後にかゆみが出れば「あ、かぶれている」と分かりやすいのですが、口紅やリップクリームによるかぶれでは、塗っているときに油分でしっとりしているため、違和感を感じにくいのです。
このタイプのかぶれは、洗顔後の何もつけない状態のときに、唇が今まで以上に乾燥する、急に唇がつっぱるなと感じた場合は、要注意です。
いつもより乾燥しやすい=炎症が起きている と考えて、たとえ塗っているときには潤っていると感じてもその口紅やリップクリームは使用することを中止することをおすすめします。
唇のシミや黒ずみを取る方法
唇のシミや黒ずみができる原因が分かったので、その原因を除きながら、 セルフスキンケアや唇の黒ずみを取る治療をお伝えします。
①軽度の色素沈着
刺激を避けて保湿
低刺激のリップクリームを使う。 何を使えばいいかわからないときは「ワセリン」を塗る
1日に10回近くリップクリームを塗っても、乾燥が続く場合、それは強い炎症が起きている証拠です。
その場合は、弱いステロイドを1日2~3回、3日間ほど塗って、早目に炎症を抑えることをおすすめします。
皮膚科クリニックを受診するか、市販のステロイド外用薬を使用するか、どちらでも構いません。
クリニックでは、ロコイド軟膏などmediumクラスのステロイドを使用します。
市販薬の場合は、同じ成分のヒドロコルチゾン酪酸エステルの軟膏が唇に安全に使えます。
*軟膏とクリームがありますが、炎症があるときは刺激の少ない軟膏を選んでください。
注意!市販薬を3日間程度塗っても改善しない場合は、必ず皮膚科クリニックへご相談ください。
②唇のふち全体に濃い色素沈着
唇のふちに線上に見られる濃いめの色素沈着は、メラノサイトが作ったメラニンがたまっているような状況と考えてください。
時間をかければ、黒ずみができる原因を取り除くことで、たまったメラニンもいずれ消えていきますが、早めに対処をしたいと思った場合は、クリニックの治療を受けることをおすすめします。
クリニックでの治療は、たまったメラニンを取り除くために、ターンオーバーを早めてたまった色を押し出す方法と、たまった色を少しずつ壊して体のお掃除屋さんに取り去ってもらう方法の2つがあります。炎症後色素沈着」は、ニキビ、傷、やけど、虫刺されなど、何かしらのダメージによって皮膚に炎症が起こったあとにメラニンの色素が沈着してできたシミを指します。
炎症のせいで、メラノサイトがアクティブになり、色を作り続けている状態なのです。
通常肌の炎症が治まって赤みが引いた後にあらわれ、肌のターンオーバーによって半年から数年かけて徐々に薄くなっていくことが多いのですが、受けたダメージの状況によっては消えずに残ってしまう場合もあります。
レーザー治療の刺激で、新たに色素沈着ができることもあります。ることもあります。
たまった色を押し出す方法:クリニックでトレチノイン+ハイドロキノンによる美白治療
塗り薬を1日2回程度使用し、肌のターンオーバーを進めることで、たまったメラニンを押し出します。
メリットは、自宅で自分のペースでケアできること。
デメリットは、トレチノインを使っている最初の2週間ほどは今以上に唇が乾燥します。この時期は、紫外線をより一層避け、刺激のある食べ物は避ける必要があります。
色を少しずつ壊して取り去る方法:レーザートーニング
クリニックでレーザーを弱くパチパチと当て、数回治療することで、色素を壊して色素沈着を除いていく方法です。
メリットは、治療による反応がほとんど無く、日常生活に支障をきたさないことです。
デメリットは、パチパチとした痛みがあること、唇だけのレーザートーニングをおこなっているクリニックがあまりないこと、通院回数が必要なこと
③ハッキリとした濃い茶褐色のシミがある場合
なかなかセルフケアでは取れないタイプのシミなので、クリニックでレーザー治療がおすすめです。
医療クリニックのレーザー治療は、医療用レーザーマシンを使ってシミなどの黒ずんだ部分にだけレーザーを照射し、目立たない状態へと導く施術です。
治療に使用する主なレーザー
Q-YAGレーザー/ピコYAGレーザー
Qスイッチルビーレーザー
Qスイッチアレキサンドライトレーザー/ピコアレキサンドライトレーザー
顔のシミと同様に、レーザーで治療を行います。
メリットは、1回あるいは2回の治療で満足いただける結果になることです。
デメリットは、パチンとはじかれたような痛みがあり、みずぶくれができる可能性があることです。
まとめ
唇のシミや黒ずみは、年齢にかかわらず気になっている方が多くいます。
原因を取り除き、美容医療の力を借りながら早目にきれいにすることが、満足できる結果への早道です。 ケアすれば改善するシミ・黒ずみなので、お悩みの方はお気軽にご相談ください。
まずは知って欲しい、 シミ治療の「4つのポイント」
シミ治療を行う際に、知っておいてほしい4つの大事なポイントがあります。
1.シミの種類
2.シミの原因
3.シミの予防
4.シミの対策
シミをより深く知ることで、シミ治療をより良くおこなっていくことができます。
当記事(シミの種類)以外の、シミ治療の大事なポイントはこちらから